シャガールの絵は、独特な色彩のなかに、どこかうっとりとするようなあたたかさや優しさといったものが感じられて、それは彼自身の純粋な愛やこころが絵に溢れているからなのかもしれません。
そのシャガールが、絵のモチーフとして多く描いたのが、お花です。
「誕生日」(1915年)という作品の中で、
シャガールとベラが浮遊して幸せいっぱいな様子があらわれているのですが、そのベラが大切に握りしめているもの。。
「誕生日」 |
そう、花束です。
相当の身分違いの恋であった2人ですが、パリへ修行中のシャガールをベラが初めて訪ねていった時にあげたプレゼントが、この花束だと言われています。
〜1915年の私の誕生日に、ベラが花束を持ってやってきた。私は貧しく、私のそばに花などなかった。私にとって花は人生の至福を意味するものだ。〜
後に彼はこう言っていますが、その時の喜びといったら、相当シャガールの心にぐっとくるものだったのだと思います。
何しろ彼は、80歳を過ぎておじいちゃんになってからも、そのベラの花束を思い出しては何度も何度も絵に描いているのです。
自分が28歳のときにもらった花束をです。
初めて私が、この「誕生日の大きな花束」の絵を見たとき
その花束が28歳の当時よりいっそう大きく魅力的に描かれていることに深く感動し(当時シャガール80歳過ぎ)
「誕生日の大きな花束」 |
そして、また初めてこの「パレード」という絵を見せてもらったとき
花束を大切そうに持っているベラ(右下)、そして幻想的なシャガールブルーの色彩に只々心打たれ、
パレード |
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私は、絵にこめられたシャガールの純粋な思いが、人のこころをこんなに動かすものだとは思ってもいませんでした。
花はいつか枯れるけど、彼のこころの中でずっと生き続けていた、という証です。
花は、そのかたちがなくなっても、なお人のこころに生き続けることができるもの。
「大切な人との記念日に、シャガールの絵をみにいく。」
そんな過ごし方というのも、素敵ではないでしょうか。
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