生花はどうしても持ちが悪くなり、少しでも長く咲いていてもらえるよう、日々私も工夫をこらしていますが、その豆知識はまた改めて別のトピックであげることにして、、
今回は「お花の儚さ(はかなさ)」というものにフューチャーしたいと思います。
古来から、静物画としても、花というモチーフは多く描かれています。
別名「花のブリューゲル」と呼ばれるくらい、豪華絢爛な花をたくさん描いたヤン・ブリューゲルという画家は有名で、皆さん一度はその絵をどこかで見たことがあるかもしれません。
こういう、色とりどりの花がボリュームもりもりに描かれた絵です。
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ヤン・ブリューゲル(父)花束 1607 |
豪華で美しい絵でありますが、
華やかに見える絵にもどこかしら儚さといったものが見え隠れしているように思えます。
よく見ると、下に花が落ちていたり、中にはフレッシュでなさそうな花や蒸れて折れていそうな茎が混ざっていたり、、、
上のヤン・ブリューゲルの絵をご覧になって感じたように、当時の静物画は、軽やかというよりは、なんかどっしり重厚感のようなものがあるのが特徴です。
よく、こういった古来の静物画で、メインの被写体のそばに、骸骨だったり、熟れた果物だったり、蠟燭だったり、よくみると一見なんで?というものがふと脇に描かれている絵をご覧になったことがあるでしょうか?
骸骨の絵なんて、夜に見るとちょっとゾッとしますが、こういった時の経過やはかなさを連想されるものを置いた静物画は、「ヴァニタス画」と呼ばれています。
ヴァニタスとは、ラテン語で「空虚・虚しさ」などの意味を持ちます。
~美しさは永遠ではなく、いずれは衰え消える。そういった死へ向かうことを恐れないで~
という教訓がヴァニタス画というものに込められています。
美しさや若さは永遠ではない、、
女性にはグサっと来るのでしょうか。。
私は女ですが、こういった永遠でないものに強く惹かれます。
そして同時に思ったのが、こういったはかなさというものに魅了された人は、時代を超えてたくさんいたのだと。。
ある本で、ロバート・メイプルソープという写真家を知り、彼は42歳という若さでエイズでこの世を去るのですが、彼が自分の余命を悟ったとき、このチューリップという作品を撮ったそうです。
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チューリップ(1987) |
彼は、ヌードやゲイカルチャーなどの作品で知られていますが、still life(静かな生 もの言わぬ生命)というジャンルで花の写真の作品も多く残しています。
この写真から、皆さんは何を感じるでしょうか?
花の儚さと自分の死への経過を重ねて、友人へ贈ったロバート・メイプルソープ。
すべてを網羅できたわけではないですが、メイプルソープの花の作品はかっちり男性的な感じを受けるなか、このチューリップだけは、なんか別ものだと感じました。
「花は儚いからいい」
そう言ってくれるレペトワールのお客様に、私は心が洗われます。
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